カードイラストとモデルの違い

カードイラスト:
一点豪華主義型で機能性は低いが、今の高解像度型モニタとの相性が高く、それゆえ作家さんの個性をさらなる魅力に昇華できるメリットがある。また解像度さえ許せばデフォルメから超リアルまであらゆる表現が可能となるし、スペックに合わせ自由に品質を上げられるため、徐々に工数は高くなるが長期運営との相性も高い。一方で、動かす工数が非常に高くなりがちで、同じ品質のものを大量生産するには向いていない

3Dモデル:
モデルは解像度の低い全方位型2Dで、カメラや操作に合わせリアルタイムで自由に動かすことが可能。LODを考えれば、ゲーム内のあらゆる場面で登場させることができるし、ゲームの性質や場面、予算に合わせ、品質のバランスを変えることができる等のメリットもある。一方で、表現解像度が低いためキャラクタ毎に表現に作家性のようなものを持たせるのは苦手。
また、仕様に密接に絡み、かつ関わる人数規模がイラスト制作時と比べはね上がるため、造形やテクスチャ品質、揺れもの設定等といった見た目的要素以外に、ゲーム内でどう扱われるのか、運営で増えそうな要素をあらかじめ考慮し、制作全体を統括するレギュレーションやルールが整えられている必要がある。これをしないと中期的にはゲームの魅力を下げ、長期的な品質保障が非常に大変になる

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スマホのゲームってイラストじゃないけど、いつでもどこでもを軸にした一点豪華的な遊ばせ方で、家庭用やPCの大型タイトルは部屋でゆっくりと、な全方位豪華型の遊ばせ方だと思う。両者が集まりさて一緒に作りますか、となっても、経験からくる考え方に大きな隔たりがある。スマホのプロジェクトをスタートさせる人は、予算を取りまとめる必要があるため、運営やバックエンドの方が多く、数字と管理、長期的な数字を生み出すこと、売りとなる要素にフォーカスする。結果的にIPや作家先生を前面に出すゲームが多いことからもよくわかる。対してクライアントサイド、コンテンツを作ってきた人は、ゲームに合わせた品質にフォーカスし、その品質がユーザーに届くことでブランドを作り上げ、長期的な信頼に繋げるという発想だと思う。でも品質を上げると容量が増えたり、工数がかかったり、仕様変化への対応がしづらくなったりするし、工数を犠牲にすれば、品質が下がる。早い、安い、品質が高いをすべて実現できないジレンマがここにある。バランサーというか、ジェネラリストなのか、そういう人が増えることを期待。高工数化の選択は安易すぎると思う。

スマホのゲームっていわゆる最大公約数的なものなのかなと思う。大容量をスマホにDLできるのか離脱しないか、複雑な操作を要求してしまうのか、ユーザー数と通信量の問題はどうか、待ち時間でも電車でも遊べるのは大切か、とか考えると、例えば初期に思い描いたものがリアルなオープンワールドだとしても、結果的に少し綺麗になった箱庭でコマンドバトルすることになる。これは大きな違い。運営と仕様、表現したいコアを最初に共有することが、ふわっとしたすごく輝かしい未来に対し、時間経過とともにみんなで絶望することになることから逃れる唯一の手段なのかなぁ。

スマホゲーのリッチ化

スマホのゲーム構造は大きく「バトル」+「成長」である。
で後者の「成長」に対し「ガチャ」という課金要素を追加しているのが多いが
「バトル」っていうのは成長の確認をする重要な場所ではある一方で、
バトルが楽しくてもそれが直接的な課金には繋がっていない。
(コンティニューっていうのはあるとは思うけど)

キャラクターという面から、3Dになることでの強みを考えてみる。
それは、全方位からキャラクターを見れることや装備の変化を楽しめること。
私的に音ゲーの3D化は非常にというか強烈にうまい3Dの使われ方だと思っていて、
なぜなら、ゲーム中に3Dキャラクターが自分の方を向いて踊ってくれるから。
キャラクターを眺めながらゲームも楽しめるモデルというのはなかなか少ないんじゃないのかな。
普段からキャラクターを眺めることで、もっとかわいくしたい、他の衣装も見てみたい、となりやすそう。

逆に3Dの弱みはバトル部分で特に感じる。
スマホは物理ボタンがないからアクション性のある操作が大変なのは言わずもがなだが、
TPSのようなレイアウトになるゲームは、キャラクターが「小さく」「後ろを向いて」いる。
操作フィールドが広がれば広がるほど、キャラクターに対しての「表現密度が落ちる」。
バトル内ではキャラクターの魅力は基本落ちるはずなのだ。
となると、TPSを作る場合、キャラクター成長要素、と別の軸を魅力として用意してあげたほうがよさそう。
では、それは気持ちよいエフェクトなのか?

私的に、多くのゲーム開発者が陥ってるんじゃないか、と思うのが「バトル」部分のリッチ化と考える。
3D化し、バーチャルパッドで操作できて、カメラが動いて、リッチなフィールドを動けて、
エフェクトがリッチになって・・・

でも、遊びたいゲームと、遊べるゲームって違う気がするんだよなぁ。

家庭用ゲームがなぜ衰退したか、って、リッチ化と裏腹に余計な演出要素が増えたからだと思う。
自分はPSの頃のFFの召喚獣演出とか大好きだったけど、そのうち演出スキップ機能が入った。
過剰演出を求めないユーザーが現れ始めたのだ。
ロード時間がすごい長くなってイライラするとかも、全部家庭用が通ってきた道。

リッチな絵は「成長」「強さ」「ご褒美」として求められてるとは思うんだけど、
結果、「バトル」部分まで重厚長大にして喜ばれるのかは甚だ疑問。
また、「成長」部分もかなり複雑化してるので、ここだけでも一本のゲームのようなボリュームだ。

なんでみんなスマホに移ったのかって、ゲームに割ける時間が減ったから、だと思う。
ゲームを「細切れ化」することでいろいろな隙間時間に遊べるようにしてヒットしたのが今のスマホのゲーム。
スマホのゲームはネットやアプリやLINEや電話と並列にあるものなので、基本は「ながら」プレイ。
電池の減りが早かったり、ワンプレイが長かったりすると、それ以外のことがしづらくなる。
スマホライフバランスを崩しちゃうようなゲームは長くは遊んでもらえないはず。

よくみる「育てた3Dキャラクターがリアルな3Dフィールド内で大暴れします!!
これがなんとスマホで遊べるんです!!」的表現。これは本当に「魅力的」??
もし求める人はPCや家庭用ゲームを買ってるはず。スマホよりもっと魅力的だから。

ベンチャーに入ってすぐに潰れた話。

昨年6月に会社を辞め、エージェント経由で知り合ったスマホゲーム制作のベンチャー企業で仕事をすることになった。ゲーム全体が見える中で仕事をすることに興味があったし、スマホにおけるビジュアルの正しい作り方についても実践したかった。ミニマムだと全てが手に届く位置にある。ベンチャーでありながら親会社のおかげで福利厚生もきちんとしてたので妻を説得できた。

入る前に実際のゲームを見せてもらった。unityで開発してるということだったが、はっきり言って出来は悪かった。リアルタイムストラテジー型のゲームでありながら、キャラクターの記号化がほぼされておらず、戦況がわかりにくく、かつ無駄に作りこみがされていた。単品で見ると綺麗だが、オーバーワークだった。背景も綺麗に作られていたが、レベルの修正・調整を加えることを考えると、DCCツール側で全て作ってしまっており、これは工程上のリスクになるだろうと思った。キャラクターデザインや世界観設定は結構できていたが、詰め切れてはおらず、かつ中で抱えていたので工数が高そうだった。3D系のスタッフが中にほとんどいなかった。unityの実装はあまり進んでいないようだった。入ってから全部テコ入れだろうと思っていた。

社長1名、管理1名、UXデザイナ1名、プログラマ2名、キャラデザ1名、アート1名、出向外部背景モデラー1名、3D1名、2D1名、AD1名、企画2名とかだった。自分はADが辞めてしまったとのことで、そこに入った形。他、外部委託会社にキャラモデルを発注し、モーションは個人に発注。シナリオも外部委託していた。

前年7月に始動したこのチームはこの6月まで一度も出資会社に対してゲームを見せていなかったそうで、ちょうど自分が入る少し前に初めて見せたようだが、その結果が芳しくなく、リベンジ(もう一度見せる)を行うとのことだった。ただその先も追加出資は受ける予定にはなってるから問題はないと思うとのことで、そこは信じてついて行こうと決めた。しかし入社後すぐ、これでは追加出資はできないと最終決断が下り、結果会社のクローズが決定する。

ゲーム制作スキルというのは、動くものを仕上げるスキルだ。実際にこの会社が行なっていたことは、外部委託先に全てを作らせ管理をしていただけだ。自分たちが作りたい世界観、ジャンルでゲームを作る、というところはしっかりあったわけだが、それを「製品として形にする」部分の優先度が1年間ずっと低いままだった。外部委託をするだけであれば、作りたいものの方向性と、外部委託先のスキルが高ければ極論誰でも良いものを作れる。でも実際にチームに問われるのは、アセットの品質ではなく、ゲームの実装やゲームの見せ方や運営の部分であり、もし自分が出資側の人間であればそう感じたと思う。ネットワーク部分もできていなかったし、モーションの実装もできていなかった。

入社後しばらくして、給与の支払いができないという話を聞いた。そして新たな出資先を募っているという話があった。色々な会社にアポを取り出資相談をしていたようだ。一度会議室に集まり今後の予算に関して話し合う機会があったのだが、そのとき見せられた書類がまた出来が悪かった。エクセルに開発コストと売り上げ予測の数字が書かれていたその資料は、プランが3段階分かれていたが、その内容は売り上げ規模に応じて成功か失敗かを書いてあるだけのものだった。それぞれのプランのためにどのような取り組みをしていくのか、については一切書かれていなかった。

自分は入社前にあきらめない、最後までやり切ろう、をキーワードに、アカツキのスタートアップの頃の記事とか読んで盛り上がっていた。それもあり、出資先さえ見つかればもう一度スタートできると考えていた。今のアートアセットの問題を解決し、ゲームとして正しい見せ方、作られ方をすれば工数も減るし、ゲームとしての魅力も増す。工数面とアート面での回収のための資料作りをし、それを出資先に資料として見てもらえるようにした。

入社からどんどん人が減っていった。社長は外回りをしてるので来ないし、ゲームは出資が止まり人も減っているので進まない。企画の人も再スタートプランのための外部委託先との交渉とかしてたので、ゲームのためにできる作業がほぼなかった。自分は黙々と資料を作るくらいしかできない。Mayaはライセンスが切れていて、LTの体験版を入れてモデル修正とかしていた。TurtleでAOのベイクをしたの初めてだ。Adobeも1ヶ月の体験版を使っていた。社内で就職活動を始める人が増えた。自分ももう一つの会議室に呼ばれ、就職の斡旋をしようかという相談もあった。と同時にもう少し付き合ってほしいという話もされた。自分はもう少し付き合うつもりでいた。

一般的なコンビニの一回り小さいくらいの会議室の入口には会社のロゴの入ったプレートが付けられ、中は中央と壁沿いにぐるっと平机が配置され、本棚には資料がたくさん入ってた。入口近くにはゴミ箱と社長が持ってきたエスプレッソマシンと冷蔵庫があった。椅子はアーロンチェアとかの類いの高級なもので、他細かな備品棚や鏡、ハンガーラック、もちろん個人のPCやノート、スマホ等もあった。こじんまり、にぎにぎとした開発ルームだったが、7月中旬には会議室を彩っていた植栽が業者により持ち出され、8月1日には開発室が普通の会議室に戻った。自分は最後まで残っていたので、その会議室の整理も手伝った。短い期間ではあるが、貴重な経験を出来た場所だった。残念ながらネガティブな面でだが。

会社にはスタッフのアサインに協力してくれたエージェントの人がいて、その人経由でとある会社のコンサルとして迎え入れてもらう話が浮上した。多くのラインを抱えているそうなのだが、スタッフが揃っていないとのことで自分たちがその会社のテコ入れスタッフとして入ることになり、その会社の開発統括部長と残っていたスタッフで面談を行うことになった。6名くらい。給与が支払われていないのにそれでもついてくるチームというのも相手の映りが良かったみたいだ。

話は悪くない方向で進んでいたが、実際にはこの「作戦」には続きがあり、出資先を募る活動はずっと裏で続け、出資先が決まったら、この会社のプロジェクトから抜ける、という想定になっていた。自分は正直それでは良い仕事はできないだろうとは感じていた。また、給与はもらえるが現在の会社は債務超過で閉じざるをえないので、新会社の登記が終わるまでスタッフはフリーの業務委託扱いとなるとのこと。そうなると会社所属ではないので、保険や税金の支払いに会社の補助がなく、給与は据え置きという想定だったので実質大幅給与ダウンとなる。

会議室がクローズされてしまい、会社に通うことができなくなった自分は、仕方ないのでチーム解散の話を妻に伝えると当たり前だけど大激怒。急転直下、社長とは縁を切れ、コンサル予定の会社との話もすぐに断れとなった。で、しばらくしてこの話も破談になったことを他のスタッフから伝え聞いた。

社長はオプティミスティックな人だった。なんとかなるさ系。お金面が大雑把でそれにより給与未払いや最終的な債務超過となるわけだが。。。人当たりは悪くないけど、あまりみんなで議論をする、というのが嫌いなようだった。立場的に仕方がない部分もあると思うけど、秘密主義で高圧的なところがあった。会議室に全員が集まってする開発は賑やかでそれぞれいろんな意見が飛び交うような環境なのだろうとワクワクしたが、蓋を開けてみると、社長が個別に人を呼び出しなにやらごにょごにょ話をすることが多かった印象がある。そういうのが多いとお互いに構えてしまうからよい信頼関係は築きにくいのかなと感じる。実際に自分が入る前に対立構造が出来てしまったようで、それにより前ADが辞めてしまったとのこと。短い期間ではあったが、一連の流れを見てて思ったのは、ベンチャーの社長っていうのはゲーム作ってる時間はないんだなぁと。マネジメントとあとお金すごく大事。常に財務状況をウォッチしてないといけないのかもしれない。マネーの虎高橋がなりの名言が響く。「僕会社2個潰してるもんでね。その時に一番味わったのが、勝負に負けると人去っていくんですよ」(https://youtu.be/Jm80nZ0_jiw?t=42m54s)入社前に早く来てよ、一緒に頑張ろう、と言ってくれた人たちは、みんな何も言わずに去っていった。

9月に出資先会社の決算発表があった。そこには出資先の自分たちのいた会社名と、その会社に出資した出資金が特別損失1億円として計上されていた。

そのあとも色々あって、もちろん就活だけでなく、給与未払いだけでなく、そもそもゴタゴタの最中、自分の入社手続きが終わってなかったのだ。それまでは親会社のサポートで会社の事務手続きは行われていたのだが、会社の事務の人が給与未払いで辞めてしまい(フェードアウト)、自分の入社手続きを社長が引き継いでなかったのだ。このままだと税金や年金の支払いもあるので、雇用保険や、厚生年金の手続きのため、退職後に社長をつついてそれら手続きを行ってもらった。で、その手続きをしてもらうのになんと2ヶ月くらいかかったのだ。他のスタッフも年末調整のための書類がもらえてなかったりとかあったみたい。これはイライラした。鈍感力なのか、弁護士でもついてるのか、単に忙しくていっぱいいっぱいだったのか知りたいとも思わないが、社長はとうとう一度も謝らなかった。就職活動をしつつ、失業給付のためにハロワに通ったり、未払給与代替払制度(国から給与保障を受けられる制度)の手続きも行った。この手続きをすることで8割の補助が出る。その手続きに労基にも行った。妻にはベンチャーは絶対やめてね、と言われた。自分も疲れた。

再就職はとりあえず出来た。その前の会社で入ってた確定拠出年金確定給付年金の移管とかも済んだ。未払給与も国から振り込まれた。なんとも濃い半年だった。自分的に一段楽したので筆をとってみた次第。